和歌山県和歌山市美園町のメンタルクリニックおおや

JR和歌⼭駅ステーションビルMIO 5F

診療予約(予約優先)

073-427-0008

おおや通信
NEWS

体内時計(1)

人の細胞の一つ一つに時計遺伝子が組み込まれており、体内時計の中枢は脳(視交叉上核)にあることが判っています。人の体内時計の周期は約25時間とされ、社会的時間の24時間周期、自然的周期の約24時間より長いのです。つまり、刺激を与えられずに「勝手に生活して下さい」とのフリー・ランの条件下では、1日に1時間ずつ遅く眠くなったり、自律神経やホルモンの周期が1日に1時間ずつ遅れることになります。

睡眠覚醒リズム障害

 眠れないことはないけれど,寝付きが悪かったり、朝の目覚めが悪い、日中の眠気が強い等でお悩みの方は多いと思います。そのような方には睡眠覚醒リズム障害の可能性があります。この障害のイメージとしては、海外旅行での時差ボケがあります。普通時差ボケは数日で回復しますが、体内時計が社会的時間や自然との関係で不調和であると、朝起きができず出勤できない、仕事中の眠気が強い等の問題で、社会生活が障害されます。

 

睡眠障害総論1

睡眠障害には不眠、中途覚醒、早期覚醒、過眠、浅い睡眠、日中の眠気等が指摘されますが、要は一日の睡眠・覚醒リズムの障害(夜間と日中の覚醒水準の差が小さい、昼夜逆転での睡眠位相の乱れ)と入眠困難・睡眠中断のし易さに集約されると考えられます。このうち治療としては後者が主としてターゲットであり、眠前に睡眠薬や鎮静作用のある抗うつ薬を服用して頂き、速やかに入眠して頂いたり睡眠の中断を回避しようとします。朝に眠気を感じられる方が多いのですが、眠前薬の持ち越しというよりはうつ状態による覚醒の立ち上がりの悪さやリズムの乱れが原因である方が多いと考えられます。作用時間や半減期から考えて、薬の影響とは考えにくい場合が多いのです。

睡眠時無呼吸症候群

デジタル機器の発達で,長時間の脳波記録や動脈血酸素飽和度の測定が可能になりました。かつては記録紙に保存されたデータが今はディスクに保存可能です。解析も速くできます。このことが睡眠に関する知見を飛躍させました。磁気記録されたデータをパソコン画面で閲覧したり,計量化することができます。精神科が扱う睡眠障害も診断し易くなりました。特に,睡眠時無呼吸症候群(SAS)の検査に関しては,呼吸器科や耳鼻咽喉科では一般的な検査になっています。睡眠時無呼吸症候群は頭痛や昼間の強烈な眠気,意欲低下や脱力感を伴い,うつ病やうつ状態に似た症状を呈します。いびきの止まる方はまずSASを疑って下さい。精神科や心療内科は後回しで結構です。耳鼻咽喉科での鼻づまりの原因(副鼻腔炎や鼻中隔湾曲等)のチェックが第一と考えられます。

執着性と強迫性

うつ病の病前性格として執着性が挙げられます。執着性とは「こだわり」なのですが、強迫性も「こだわり」です。前者は自我親和的であり、後者は自我違和的であると説明されます。個人的な目的や価値観の追求、他者の為に断れない等の理由でこだわるのが前者です。後者では不快な考えや忌み嫌う状況に囚われるためにこだわります。どちらにしても疲労感が蓄積します。その病的な状態が、前者ではうつ病であり、後者では強迫性障害ということになります。

西行について

西行の和歌は新古今和歌集に多くが登場し、小倉百人一首にも選ばれています。その際は唯の西行ではなく西行法師となっています。「なげけとて 月やは物を 思はする かこち顔なる わが涙かな」がその歌です。山家集という歌集も有名です。管理者が西行が和歌山県那賀郡打田町(現紀の川市)竹房の生まれであると知ったのはほんの十数年前でした。銅像が建っています。イメージとしての西行は松尾芭蕉と重畳する部分が多く、詳細を知ることはありませんでした。西行の研究者が多いことを最近知り、びっくりしています。

障害者白書について

本日政府は精神障害を有する人が300万人おり、その3分の1が感情障害(要するにうつ病が増加したとの含意)であると発表しました。障害という概念を「回復しないもの」とイメージすると、この政府発表は大きな誤解を生じます。うつ病の多くは回復し、生涯固定するものではありません。また仮に固定したものであったとしても、その人なりの人生は全うできます。問われるのは、予防、早期治療、危機管理、社会的な認識だと思います。その人を取り巻く人たちの理解や協力も重要です。